保護者インタビュー【お山の教室に通わせてみて編】

お山の教室があることが決め手に!大阪から親子島留学。
お山の教室がある海士町は、小中学生の親子向けの親子島留学という取り組みをおこなっています。
1年間から最大2年間、親子で島に住み島を体験してもらおうというものです。
親子島留学のサイトはこちらから
今、多くの地域が山村留学・島留学をおこなっている中で、海士町に森のようちえん・お山の教室があったことが決め手になったというご家族がいます。
下の男の子をお山に通わせたい!思って大阪から来てくださりました。
島に来たのは、母・田仲亜希恵さん(30代)・Aちゃん(当時小2、現在小3)・Bくん(当時年中、現在年長)。お父さんは大阪です。
ーーーーーーーーーーーー
学校のことについては、お姉ちゃんのAちゃんが4歳になったころから考えはじめて、公立や私立の他にオルタナティブやフリースクールなどの選択肢の中の一つに離島留学もあったとのこと。
様々な学校を見学し検討したけれど、Aちゃんがお友だちがいる地元公立小学校を希望したこともあり、一度は地元の公立小学校へ。
しかし、母・亜希恵さんが通った小学校は大阪といえど1学年2クラスぐらい。Aちゃんが通う小学校は1学年4クラスという多さ。
「小さいときは少人数コミュニティーで育つのがいいな」と思っていたこと、小学校は長いつきあいになるのに、お友だちの保護者の顔が見えないことに違和感があったといいます。
また、森のようちえんに通わせたいけれど近場にないことから、普段は私立の保育園で1学年40人ぐらいの所に通わせていました。
しかし、土日に自然遊びの親子クラスに行ったり、子どもだけのキャンプに参加させたり。自然の中で遊んでいる子どもたちがとてもいい顔をしていたそうです。
そして、子どもたちの将来を考えたとき、いろいろな経験は貴重になるだろうし、自分の考えを持って欲しい、同じことができるだけではなくて、自分はこういうことができる、自分はこう考えるということを持って欲しいと思ったそうです。
そんなことから、海士町の少人数の小学校と森のようちえんがある環境は、「どっちもあるやん!」と、ピッタリだったとのことです。どっちかがなかったら選択肢にはなかったとのこと。
更に、母1人・子2人で行くことを考えたとき、災害が少ないところをと考え、海士町のある隠岐諸島は地震がほとんどなく、気候も比較的に良いらしいと、隠岐出身大阪在住の方何人かに話しを聞いていたことも、条件に合ったと言います。
そんな亜希恵さんにお山の教室と海士町の島生活について聞いてみました。
ーー:
Bくんは年中(4歳~5歳)さんのときにお山に入園し、今は年長さんとなりましたが、お山の教室で驚いたことってありますか?
亜希恵さん:
「就学について、どれぐらい適用できるんやろう」とちょっと心配していた。「普通の幼稚園は読み書きするけど、森のようちえんってどうなんやろう?」と思って。
「就学の用意として、文字や数字は覚えさせなあかんのかな」と思っていた。
実際にお山に行かせてみたら、お姉ちゃんがいることもあるけれど、今、文字を読めるようになって簡単な足し算とかできるようになってん。
自主的に学ぶことをしている。そういうのは、興味があるところから自然に湧いてくるもんなんだなって。
ーー:
そうなんですね。それは子どもへの驚きですね!すごい。
亜希恵さん:
お山のお迎えに行ったときも、木の形で文字を理解していて「この形は『つ』だよ。こうやったら『し』になるでしょ」と言っていて驚いた。で、「点点ついたらなんになるんやろう?」って。
異年齢でいるからか、本を読み聞かせる時間もあるし、絵本に触れる時間もあるからか、疑問に思ったらちゃんと聞いてくれる大人がいるからか。
ちゃんとわからなかったら聞けるし、わからないと言えるからか。
ーー:
お山では外で遊んでいるだけとよく思われがちなんですが、絵本を読みきかせの機会も多く、絵本を見たり読んだりする機会も多いもので。
それこそ見つけた虫がわからなかったら図鑑で調べたり、本に触れる機会もまあまああると思ってます。
これは、不思議なんですけど、いつのまにか覚えているということもちょくちょく聞きます。
スタッフが保護者に「最近文字読めるようになりましたね。お家でなにかされているのですか?」と聞いたところ、「なにも!お山で教えてくれたんだと思ってた」と。
クッキングのときなど、役割分担をするときにホワイトボードに名前を書いたりするので、自分の名前には興味を持って、書いてと言われることもあるそうですが、文字に関してはその程度なんですけどね。
では、お山の教室でよかったことは?
亜希恵さん:
聞いてくれている大人がいる。スタッフさんがよかった!ひたすら子どもの言っていることを聞いてくれている。私ができないことをすべて補ってくれている。
子どもの言葉が出てくるまで『待つ』というのは母はできない!だから、Bくんは本当にスタッフのことが大好き。
島歩きハンドブック(隠岐しぜんむらが発行した本)をもらって家で見ていたとき、「この本好きやわ!この写真がむっちゃいいと思う。」と言っている写真がスタッフの集合写真!!
ーー
巻末にひっそりと掲載された写真ですね。その前には100頁ぐらいたくさんの植物の写真があるのに(笑)
亜希恵さん:
それぐらい、安心できるグランドを作ってくれている。
年中さんの1年を過ごしてBくんがすごく変わったので、親子島留学をもう1年延長して卒園までいようと思った。
コロナ禍でパパが一度も海士には来れなくて、1年ぐらい会えなくて、米子で会ったとき、パパもすごくBくんが変わった!成長した!と言っていた。
「行っているところがいいんだろうね。」って。
ーー
そう言っていただいて本当にありがたいことです。どんなところが変わったと思いますか?
亜希恵さん:
Bくん、自分はこう思うんだとちゃんと言えるようになった。
朝、「ママと一緒にいたい!」と泣くことがあって、時間がなくて泣いているまま仕事で行ってしまったことがあって…。
夕方に「今日Bくんが泣いたのはね、ママといっしょにいたかったんだよ。でも、ママもお仕事急いでたのにごめんね」と。
自分の気持ちも伝えるけど、ちゃんとママには悪いことしたってわかってる。
それとか、「ママたいへんだから手伝うよ」と洗濯物取り込んでくれたり、お弁当作ったり。自分でやることも増えてきて「Bくんがやるからいいよ、いいよ」って。
自分の気持ちも言えて、自分で考えて相手のことをやってくれるってけっこう高度なことやと思う。
状況説明ならお姉ちゃんの方が上手だけど、Bくんは気持ちを言ってくれる。そのへんが育ってきていると思う。
自分の気持ちが言えなかったり、その場を抑えるために大人がおさえちゃったりあると思うから。
ーー:
そうなんですね。
自分の気持ちがどうあるか、不快なのかうれしいのか、大人になればなるほどわからなくて、無理してしまう人や悩んでいる人がいるということを聞きます。
自分の気持ちがどこにあるのか、自分の気持ちがわかって、相手の気持ちも思いやれるのではないかという、そういうことを大事にしていきたいと、お山の教室が始まったので、そう言っていただくと嬉しいです。
ーー:
それでは、いいことばかり聞いても嘘くさいので、残念だったことや、もうちょっとこうし欲しいということを聞いてもいいでしょうか?
これから入園を考えている方に、そういったことも事前に知ってもらうというのは意味があると思うので…。
亜希恵さん:
残念なこと…、ない!
ーー
えっ、ない!
亜希恵さん:
今年は夏の給食が1回増えたし、むっちゃ嬉しい。
※今年は試験的に夏は給食を週3回にしています。
最初は、「週3回お弁当か~」と思っていたけど、慣れると苦じゃない。
お弁当は、たこ焼きだけの日もあるし、お好み焼きのときもあって、そんなにきっちりしなくてもいいかなと思って。
「今日はなにがいい?」とコミュニケーションの一つにもなるし。
働いているから、普段から夕ご飯におかずを多めに作りおきしていることもあるから、夏は心配で、給食が増えてよかった。
食事でいうと、Bくんは給食も好きだし、クッキングのおかげで台所に立つようになった。
夜に「ラーメン食べたい」と言いだして、私が「ラーメンなんか夜ご飯にしないよ」と言うと、鍋を出して袋を開け始めて。
家はガスなので、火だけは大人が点ける約束をしているから、全部セッティングして「ママ、火点けて」って。
ーー:
ラーメン!すごっ!私にも今年中の娘がいるのですが、全然やりません。
お山のお弁当については、保冷剤をいれるのも協力していただいております。
お弁当は負担に思う方が多いのですが、おうちの人が作ってくれたお弁当!ということで子どもたちの喜びになっていることもあり。
また、遊んでいた場所でお弁当を食べて、その後にも遊びの続きができることがあり、『遊びこむ』を大事にしているお山としては、そういったことでお弁当を作っていただいています。
更に、子どもたちも山のてっぺんで食べたり、地区におでかけしたときは海の横で食べたりしていると、外でご飯を食べることに醍醐味を感じているようで、今日は金光寺(きんこうじ)で食べたい!と言ったりするそうです。
不便をおかけするところで言えば、お弁当以外でも、お天気で警報が出たら休園になること。
お盆休みなど休園日が普通の認可保育園に比べて多いなど、保護者の方にはいろいろ不便をかけることは多いのですが、それでも、残念だったことが少なくてよかったです。
後記:
お山の教室は森のようちえん形式なので、基本は外で活動をします。今回のインタビューでは、「体力がついた」と言ったことではなく、気持ちの面を大きく評価してもらったのが印象的でした。
続編の【海士町に住んでみて編】はこちらから