おみせやさんごっこ

おみせやさんごっこ

2019年度のお山の教室も先週無事に巣立ちの日を迎え、小学校へ巣立つ年長さんたちを送り出すことが出来ました。お山に関わってくださった全ての方へ、感謝しております。

そして今年度は巣立ちの日の4日前に『おみせやさんごっこの日』という日がありました。

お山に通っている年長さんと年中さんがお店屋さんになって、お客さんに来てもらう!という日です。

 

『おみせやさんごっこ』は今年の1月から始まっていた

年長さんに「巣立ちの日をどうやって過ごしたいか?」という話を投げかけた時でした。

お山の教室の卒園式である巣立ちの日は、毎年巣立つ子たちにその日をどうやって過ごしたいか一緒に考えて決めており、お山スタッフ1年目の私も同じように投げかけてみたのです。

年長さん3人中2人は私と同じお山1年目ということもあり、あまりイメージがつかず、日々の遊びや、小学校との交流会、11月に年長さんだけでした『お泊りお山』(秋にお山基地で1泊2日、年長さん3人とスタッフで過ごしました)などを思い出している様子。

「みんなのおべんとう箱をあずかって みんなのおべんとうをつくってみんなにわたす」

「くつとばし」

「たこやきやさんごっこ」

「たんぼーるでおしろつくる」

「やきゅう」

「どうぶつえんごっこ」

「かみしばい」

「くだものやさんごっこ」

「おんせんやさん」

とひとまずやって楽しかったことや、やってみたいことがたくさん出てきました。

この日はひとまず色々意見が出たところで終わりに。


(子どもが話したことをメモ)

 

次の週、もう一度同じ質問をしてみました。すると今度は、

「おんせんやさんがやりたい」

「どうぶつえんごっこがいい、だんぼーるでどうぶつ つくるの」

「たこやきやさんもいいなー」

「けーきやさんもやりたい」

と『ごっこ遊び』でやりたいことが次々と出てきたのです。

ちょうどそのころ、お山にあるままごと道具(鍋・シーグラス・貝殻・木の実・木材など)を使って、お店屋さんとお客さんに分かれて『お店屋さんごっこ』を楽しんだり、メインフィールドとして遊んでいる『いるか広場』で、お父さんやお母さん・赤ちゃんになりきって『おうちごっこ』を楽しむ子どもたちの姿を何度も見ることがありました。

子どもたちの声、そして普段の遊びの様子を振り返り、年長さんに「巣立ちの日でみんなでお店屋さんごっこするのはどう?」と話をすると、「やりたい!!!」との返事!

よしやろう!!

 

お山の教室での初めての試み

先は見えないけれど、「進めていけば見えてくるよ」という他のスタッフの声に後押しされて、子どもたちと何のお店をするか、どんな風にするか、考え始めました。

巣立ちの日の当日にお店屋さんごっこをすると、当日は巣立ちの式もありバタバタと忙しくなることを踏まえ、別の日を『お店屋さんごっこの日』とし、来れる保護者の方には気軽に立ち寄ってもらうことにしました。

今年度の年長さんは3人だったため、人数が少ないと大変かも…と思い、子どもたちの意見を聞くことに。

「来れるお父さんお母さんには、お客さんとしてきてもらう予定なんだけど…年中さんたちはどうする?一緒にお店屋さん作ってもらう?それともお客さんとして来てもらう?」

と相談したところ、

「ねんちゅうさんと いっしょに つくりたい!」

「ちいさいこには ないしょにして よろこばせたい!」

という意見が出たので、年中さんとは一緒にお店屋さん作り、年少さんと最年少さんにはお客さんとして来てもらうことになりました。

 

2月に入り、年中さんにも一緒にお店屋さんごっこのお店作りをしたいことを伝えました。

「いいよ!」「やりたい!」と年中さんも心地よい返事!

さて、何屋さんをしよう?色々聞いてみると、「パスタ屋さん」「おんせん屋さん」「おいも屋さん」の3つに絞られました。


(おいも屋さん)


(おんせん屋さん)


(パスタ屋さん)

 

さて、それぞれ準備するものは何があるかな?の話し合い中のこと…

パスタ屋さんは、

「フライパンがいるよ」

「スプーンもいるね」

「いすとテーブル」

「はっぱも」

しかし、おいも屋さんから雲行きが怪しくなってきました。

「おいもがいるね」

「あ!アルミホイルも」

「まっちと ひもいるよ」

「じゃあ しんぶんもだ」

あれあれ…?

おんせん屋さんでも

「かごがいる」

「せっけんもだよ」

「おゆとつめたいみずもいるよね」

「そとぶろもつくりたい」

当初スタッフは、『ごっこ遊び』を広げる形で、食べるものを普段遊んでる葉っぱや花や枝、泥団子などで作ろうと思っていたし、温泉も葉っぱや花を集めて温泉にしようと考えていて、「本物じゃなくて自然のものを使って作ろうね」と、子どもたちにもすでに提案していたのですが…

子どもの頭の中は違ったのです!!

 

普段の活動の中で、焼き芋を作って食べたことがあったし、温泉作ろうと穴を掘って遊んでもいました。

子どもの話を聞いていて、子どもたちは『ごっこ』ではなく本物をイメージしている!あちゃー!

「えっと…もしかして本当にお芋焼いたりしたいって思ってる…?」と恐々聞くと、「うん!」「ほんものがいい!」と即答されました。あちゃー!

そりゃそうだ。子どもはいつだって大人が本当にしていることに憧れているんだもの。

本物で出来るなら、本物がやりたいよね。

 

ここで大人も腹をくくりました!よし!本物を作ろう!!

パスタ屋さんは野外では難しいな…という思いがあり、ごっこでパスタ屋さんをするか、別のお店にして本物をするか聞いたところ、本物がいい!ということで外で出来そうなパン屋さんに変更しました。

 

しかし、初めてのこと。大人も子どももイメージが出来ず、おろおろあわあわ。でも失敗は成功の元と言うし。

実際に自分たちで焼き芋とパンを作り、お湯も沸かして足湯を作り、それぞれのお店に看板を作り準備物を用意したのは、計4回。

準備段階の時、子どもが「やけたよー」と持ってきた焼き芋を触るとまだ固く、「まだ固いみたいだけど…」と声をかけると、「もうだいじょうぶだよ、やけてる」の声。

切ってみたら気付くかな?と思ったけれど、食べるまで誰も気づかず、口にして一言目が「なんか かたい…」。

それを「これもおいしい!」と食べる子と、「なんかまずい…」と食べる子と反応は様々。

パンも明らかに中が焼けておらず「これまだじゃない?」という大人に、「もうやけてるよ!」という強い主張を出され、半生パンを「おいしいね~」と食べたり。

失敗することで、子どもなりに「もっと焼かないと」とか「焼くときにパンの置く場所が大事だね」とか気付いたり感じたりして欲しい気持ちがあったのだけど、大人の思う『失敗』と子どもの感じる『失敗』は別物だと改めて感じたのでした(笑)

しかし、失敗と感じない失敗は今回の準備だけでなく、お山で過ごす1年を通してたくさんしてきた子どもたち。

準備を重ねるごとに、大人に聞かなくても進めていたり、準備物が足りなくて「どうする?」と聞くと「これ(別の物)つかってやればいいんじゃない?!」と臨機応変に他の物で代用したり…『自分で考えて、決めて、やってみる』が自然と身につき始めていました。


(自分たちの書いた『足りなかったもの』の紙で忘れ物ないかを確認)


(「ここにこうやってはいったらいいんじゃない?」と実際を想定して実演)


(木のお皿をたくさん作るのが大変と気づいたので『お皿使い終わったら返してね』の看板を作り中。ペンは炭)


(「たおれちゃう!」と看板の周りに石をたくさん集めて倒れないように補強中)

 

そして当日…

朝来てすぐリアカーに荷物を積んで、『いるか広場』に出発!!

着くとさっそくそれぞれに焼き芋、パン、そしておんせんの準備を始めました。

当日大人はギリギリまで手伝わないよーと事前に子どもと約束していたので、火がつかなくても、上手く作れなくれも、火が消えても、「自分で挑戦してごらん」「困ったら友だちに伝えてごらん」と声をかけ続けました。

 

おふろ屋さんの準備は…

お風呂屋さんは、まずお湯を沸かす準備から取り掛かりました。準備を始めてすぐ、「おとなといっしょにまっちしたい」と伝えてくれた年中の子。いつも火が怖く、やってみる!と言っても直前で「やっぱやめた」と、やりたい気持ちと怖い気持ちの狭間にいました。

でも、今日は大人は手伝いません(笑)

本人もたくさんたくさん悩んで…「おれ やってみる!」となんと初めて自分一人でマッチを擦りました。その一回だったけど、大きな一歩。

そのあと「やっぱりだれかにやってほしい」と同じお風呂さんをする年長さんに頼むと、その子も普段大人とはマッチするけど、自分一人ではやったことない子。でも友だちに頼られ「いいよ!」と快く引き受けると、一人でマッチ擦って火をつけたのです!何と!!大人がびっくりでした。

 

パン屋さんの準備は…

パン屋さんでは竹の棒に丁寧にアルミホイルをくるむ年長さん。約30本作る必要がある中、少しずつ生地をつけ、焼くときに邪魔にならないように生地を棒の真ん中に。竹のどこに生地をつけたらいいか…も練習の中で本人が気づいたこと。

パン屋さんは前日準備でお店の場所を変えて、当日やっぱり元の場所に戻す!となったため、看板設置の準備もまだ必要だったことに開店20分前に気づいて急いで設置。

年長さんが看板を設置している間、パン屋さん担当の年中の子は、パンが焦げてないかチェック。「これやけてるかな~?」「あつい!」「あ!ひがきえちゃった」「もうこれやけてるよ」と焼けたパンを次々にトレーの中に入れ、消えかけの火のためにたくさん薪になる枝も集めていました。

 

やきいも屋さんの準備は…

やきいも屋さんは一気に芋をかまどに入れたため(5個作る予定でした)、火が消えたりついたり。パチパチくん(枯れた杉の葉)をたくさんいれて年長さんが頑張るも消え…「大人も手伝う?」と聞くと「ううん、てつだわなくていい!」ときっぱり!

自分でやりたい、自分でやれるの気持ちをこの準備の間でたくさん育ててきた彼は、大人の力を借りたくないとはっきり伝えてくれました。

そんな中、一緒にやきいも屋さんをする年中さんは、隣のかまどのマッチ擦りを手伝ったり、うちわであおいだり、「手伝ってー」と言われることに、「いいよー」と快く受けとめ手伝っていました。自分でやりたい!という気持ちも、手伝ってと素直に言える気持ちも、困っている子を助けようとする気持ちも、全てが見ていて心地よい。

(パン屋さんの下で芋を焼いてます)

 

そして開店

開店前、最後の30分は大人も少し手伝い、ついに開店!!

お金は葉っぱ。新聞紙で作った財布に葉っぱを入れて、買いに行く子どもも大人も嬉しそうです。

『おいもやさん』

『おんせんやさん』

『ぱんやさん』

 

この日のふりかえりでは、「たくさんおきゃくさんがきてくれてうれしかった」「ぱんやさんするのがたのしかった」と、達成感を感じている子どもたちでした!

 

明日からまた新年度が始まり、新しいメンバーでの一年が始まります。

どんな遊びや子どもたちの表情が待っているか…今からとても楽しみです!!

(みっちゃん)