自分の気持ち 友だちの気持ち ~はじまりの会で~
今年は梅雨が長かったですね。
お山の教室がある金光寺山では8月手前でようやくミンミンゼミが鳴き始め夏を感じるようになってきました。
今回はお山の教室で毎日している”はじまりの会”とはどういうものか!?ということをお届けしたいと思います。
お山の教室では朝9:00までにみんなが登園してきます。
みんなが集まった後、すぐに「遊びに行こう!」ではなく、『はじまりの会』をみんなでするのが、お山の一日の始まり方です。
『はじまりの会』とは、子どもたちが全員集まって、
・絵本や紙芝居を読んだり…
・はじまりの歌を歌ったり…
・天気の話や最近出てきている危険な虫の話をしたり…
・約束事の確認をしたり…
・おとながみんなに伝えたいこと、子どもがみんなに伝えたいことを伝えたり…
・そしてその日に子どもたち自身が何して遊びたいか気持ちを伝え合ったり…する時間です。
その日に合わせて進めるので、日によって行うことは違いますが、はじまりの歌と、子どもたちが何をして遊びたいのか伝える時間は毎日あります。
9:00過ぎ、「じゃあそろそろはじまり、始めようかー」とみんなに声をかけると、準備出来た子から集まってきます。
しかし…
毎日同じようにみんながすっと集まって、元気よく返事をし、大人の話を聞いて…
というわけにはいきません。
今お山には12人の子どもたちが通っているのですが、12人いれば12通りの心の動きがあります。
朝親と別れがたくなかなかみんなの中に入ってこれない子、何か嫌なことがあったのか話をする気分にならずそっぽ向いてる子、友だちとの話に夢中になる子、疲れが溜まって集中できず手元の遊びに向かってしまう子…
色んな気持ちが渦巻いています。
逆に、みんなの気持ちがピタッと合って、大人が「今日はどうした!?」と思うぐらい気持ちよくみんなが返事をし、意欲的に自分の気持ちを話す日もあります。
こんな気持ちの変化が、人間らしいなぁと感じます。
いつもいつもご機嫌良く、ニコニコいれる人はいませんからね。
しかしながら、はじまりの会は、一日をお山で過ごす気持ちの準備を整えたり、自分の気持ちを周りに伝える機会であり、また自分だけでなく周りの友だちの変化を感じたり話を聞いたりと周りに目を向ける機会でもあります。なのですごく大切な時間であることを子どもたちに伝えています。
今日の子どもたちの調子はどうか、どんな気持ちでお山にやって来たのか、どうやって始めたら子どもたちが意欲的に会に参加するか、集中できるのか…。そんなことを考えながら、はじまりの会を始めます。
(会の前に絵本や紙芝居を読むことも多いです。)
(みんなでしているという意識を持って欲しいなと思い、わらべ歌の”ほおずきばあさん”をアレンジして大人を抜こう!という遊びをしてから始まりの会を始めたことも)
また、会だけではなく、普段の生活の中で、子どもたち自身が遊びたいことをしっかりイメージする力を育てることや、もっと遊びたい明日もやりたいという気持ちを育てること、また友だち関係を深める中で友だちの話に興味を持って聞きたいと思う気持ちを育てることも大切だと考えています。
そのあとはみんなではじまりの歌を歌って、一人ひとりの名前を呼び、その日その子の気持ちを感じます。
みんなが今日やりたいことを発表するときは、大人にとっても発見があり面白いです。
「きょうはおにごっこしたいです」
「ゆっくりあそびたいです」
「さんぽにいってむしをみつけたいなーっておもってます」
「〇〇ちゃんと̻△△くんとおうちごっこしたいです」
子ども自身が思っていること、考えていることが色々出てきます。
普段あまり一緒に遊んでいない子の名前が出たりすると、『本当は一緒に遊びたいと思っているんだなぁ』と普段見えない姿が見えてきたりします。
スタッフである大人にも今日やりたいことを聞いていきます。
そこでは子どもと同じ気持ちの時もあれば、子どもからは出なかった新しい遊びが飛び出して、それを聞いた子たちが「やりたい!」となることもあります。
最近は子どもたちから「みっちゃんはなにしてあそびたいですか?」と大人に聞く姿も出てきていて、一人ひとりの気持ちを大切にしてくれてるなと感じることも多いです。
発表のあとは、相談の時間です。
みんなで相談をして遊ぶフィールドを決めたり、散歩に行くかどうか決めたりしています。
この時には具体的に『ここでこの遊びをしよう!』と一つのことを決めるのではありません。
一つのフィールドの中でできる遊びは色々あります。
例えば、こもれび広場という場所で遊ぶときにはブランコ・探検・木登り・ごっこ遊び・水遊び・虫捕り・キノコ探し…とたくさん遊べることが出てきます。
しかし…
「さんぽにいきたい」と話す子と「ゆっくりあそびたい」と話す子。
「こもれび広場に行きたい」と話す子と「いるか広場で遊びたい」と話す子。
(お山では遊ぶフィールドと散歩にいける場所が何か所かあります。)
意見がバラバラになることもしょっちゅうです。
友だちの意見を聞いて、「やっぱりさんぽにいきたい気持ちになってきた」ということもあれば、「いるか広場には行きたくない!」と主張して譲らない時も。
譲らない時には、なぜ『そこでそんなにも遊びたいのか』をみんなの前で話します。
「こもれびひろばにあるブランコであそびたい。だってブランコすきだもん」(他のフィールドにはブランコがない)という気持ちが出てくることもあれば、「けむしがいるからいきたくない、だってこわいもん」という時もあります。
まずは自分の気持ちを出せる、伝えられることが大事だということ、そして伝えた上で解決策はあるか、他のアイデアはあるか出し合ったり、みんなが少しずつ譲ったりして話を進めていきます。
「じゃあさいしょに こもれびひろばであそんで、それからいるかひろばにいくのはどう?」と子どもから提案することもあります。
そんな子どもたちの意見を聞きながら「散歩に行ったら虫捕りもできるよね」「こもれび広場でもおうちごっこできそうだよね」と最初に子どもたちが発表したやりたいことを整理しつつ遊びのイメージを膨らませながら”今日をどう過ごすのか”をみんなで決めていくのです。
また、相談する間は、対話の時間でもあります。
『対話』とは、自分だけの気持ちでなく、相手の気持ちもないとできない事。
主張するだけでなく相手の気持ちを聞いて譲る部分を作る、また譲ったり我慢するばかりでなく自分の気持ちを主張する、この2つのバランスは大人になってしまった私にはより難しかったりするのですが、まだまだ柔軟な力を持つ子どもたちの中で日々の対話を通して少しずつこのバランス感覚を育てていけたらいいなと願っています。
子どものその日の気分や疲れ具合などあり譲ることが難しい時もありつつ、周りの子たちがやりとりする姿を見て少しずつ何か感じてくれているのではと見守っています。
相談して決まったあとは、いよいよ遊び始めます。
自分の言っていた遊びをし始める子、友だちの遊びを見てあっさり「やっぱり〇〇しよう」と変える子、と様々です。
日々の遊びから今日もこれやりたい!と思えるのは嬉しい事だな、遊びを満喫しているなと嬉しくなります。一方で友だちの遊びがヒントになって遊びが広がることも多かったり、新しい体験や遊び方は保育士が遊んで見せることで真似して遊びが始まることもあります。
『自分で遊びたいことを決めて遊びこむ』ということをお山では大事にしているのですが、これは、何でも遊びを自分で作り出さないといけない、ということではありません。
『自分で“遊びたい!』という気持ちを持って遊びに向かうこと、それが『自分で遊びたいことを決める』ということだと思っています。
友だちや大人の姿を見て”自分もやってみたい!”と思って真似することも、自分もやりたい!と自分で決めて遊びを始めたことになります。
(友だちがだるまさんころんだをやり始めたの見て、次々に参加人数が増えていった…の図。奥の2人が鬼)
(スタッフのあがちゃんが真剣になって遊ぶ様子をじっと見ている…の図。2人で相談しながら流しそうめんのような台作る)
はじまりの会は、自分の気持ちを素直に出せる場所、そしてそんな一人ひとりのやりたい・遊びたいの気持ちを膨らませる時間になり、お山で過ごす時間を思いきり遊び込めたらと願い日々を過ごしています。
これから暑い夏本番!島に囲まれた海士ならではの海遊びを満喫して、子どもたちと一緒に夏を楽しむ予定です!
(みっちゃん)