保護者インタビュー【海士町に住んでみて編】

保護者インタビュー【海士町に住んでみて編】

お山の教室がある海士町は、小中学生の親子向け親子島留学という取り組みをおこなっています。

1年間から最大2年間、親子で島に住み、島を体験してもらおうというものです。

親子島留学のサイトはこちらから

今、多くの地域が山村留学・島留学をおこなっている中で、海士町に森のようちえん・お山の教室があったことが決め手になったというご家族がいます。

「下の男の子をお山に通わせたい!」と思って大阪から来てくださりました。

島に来たのは、母・亜希恵さん(30代)・Aちゃん(当時小2、現在小3)・Bくん(当時年中、現在年長)。お父さんは大阪です。

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大阪で理学療法士として産前後産後ケアのお仕事をしていた亜希恵さん。

海士町に来ても、旦那さんの仕事の事務などをするつもりで、海士町では働く予定がなかったそうです。

しかし、そのころ海士町には理学療法士さんがいなかったこともあり、近所の方が診療所に伝えて診療所からスカウトがあったとのことです。

島で個人的にも相談を受けることが多くなったので、今は海士町の診療所で理学療法士として働いています。

せっかく海士町に来ていただいたので、島の生活も聞いてみました。

お山の教室についてのインタビューはこちらから

 

ーー:
海士町についてはどうですか?意外なことは?

 

亜希恵さん:
私が予測していたよりずっと生活できる!困らない。

最初は大阪に夫がいて二拠点で生活になるから、実際に一ヵ月に生活費がどのぐらいかかるのかすごく気になって…、聞いても明確な答えがなくて、予測がつかなくてむっちゃ不安だった。

島に体験で来たときに、商店で生活に要るものを見たら、大阪と比べて高くて「ひゃ~、どのぐらいかかるの?食費」って思った。

今もやっぱり普段使いしているものが高くて、ここに来てしめじ買うのに迷うと思わんかった。

 

ーー:
たしかに、本土ではしめじやえのきが99円で買えそうですが、島では倍はしますもんね。

 

亜希恵さん:
それに慣れてくるよと言われてて、慣れてきたけど…。

仕事をしはじめてからは、リハビリに魚を持ってくる人がいたり、「なまこあるよ、なまこ持ってきた。冷蔵庫いれときな」って(笑)

地域の人とつながりができたら、うち3人しか住んでないけど野菜をたくさんもらったりと助かっている。

そう、だから思ってたより不便はなかった。

 

ーー:
お惣菜が売ってないからたいへんとよく聞きますが…

 

亜希恵さん:
お惣菜もくるの。これとこれがあったら夜ご飯できるやろって。すごく助かってる。

今は、『お弁当が買える場所』『パンが買える場所』がわかってきたから、だいぶ楽になって、お店に電話して頼むとかできるようにもなった。

まだ、電話で頼めんとことかもあるけど、つきあいで、顔が見えて、はじめてできることがあるやん。

なにもわからない来たばかりの頃だけが、ちょっとたいへんだった。

 

ーー:
意外といけるというのはよかったです。私もいわゆるIターンで来たときはわからなかったというの、わかります。

海士町で残念だったこと、もっとこうしたらよかったことありますか?

 

亜希恵さん:
う~ん。ない。もう慣れてきたのもあるんかな。

 

ーー:
もっと早く聞けばよかったですね。

 

亜希恵さん:
やっぱり仕事してなかったらたいへんやったかも。

昨年(2020年)の6月から働き始めたけど、海士町に来たばかりの4月・5月はコロナで学校は休みになって、それでも大阪とギャップがあって。地域の人との交流とか聞いていたけど、なにもできないし。

でも、仕事をしはじめたら仕事を通して地域の人と関わりができたし、それこそおじいちゃん・おばあちゃんばかりだから。そこで、いろいろ教えてもらえるし。

仕事の付き合い方から、ここの人はこういう付き合い方をするんだなとわかってきて、キンニャモニャセンター(海士町の港)で知らないおじさんから話しかけられても「おー。おー」となっている。

島の人たちの人との付き合い方がわかってきたら楽になった。

今日もうちのおすそ分けを持って行ったら、またたくさんもらってしまったし。島の人はなにも持たせずに帰らしてくれなくて、「あんたこれ持っていきなさい~」って。そういうことなんだなと思って。

ーー:
おすそ分け文化ですね。それは職場だったり、住んでいるところだったりでかわってくるらしいので、海士町に住んだからといって、必ずしもという訳ではないですが、よかったです。

それでは、子育て環境はどうですか?

 

亜希恵さん:
すごいいいと思う。すごいいいと思っている。(2回続けて言ってくれました)

「船だけは乗るなよ。船に乗ったら探せないから」って子どもたちに言っていて。

 

ーー:
船??なんか規模が違っておもしろい。

 

 

亜希恵さん:
ここでは自由にさせていて。携帯も持たせているけど、上のAちゃんには、「どこに行くかは電話はしてね」と言っているけど、どこで・だれと・なにをしていたかは誰かが見ているから、つつぬけ。

海士町に来るときにGPSを持ってきたけれど一回も使っていないし。

あんまり遠いところもいけないし。だいたい住んでいる東地区の中だけで遊んでるし。心配はあるけど、大阪ほど心配はない。

 

ーー:
人にさらわれるとかないですしね。

毎月のお山の教室では避難訓練を行っていて、お山で不審者が来たという設定でやったことがありますが、全く想像ができなかったです。

 

亜希恵さん:
島外の人がすぐわかるしね。1年いたらわかるようになった。「この人見たことない。新しい人だ。」生活圏内に入ってきたらすぐわかる。

そういう面でも子育てしやすい。

 

ーー:電車に乗ったりすることもないし、マンションに住んでいるわけでもないから、うるさくしちゃダメとか、じっとしときなさいという状況も少ないですしね。

 

亜希恵さん:
住んでいる地区は子どもが多く、BBQもあったり、世代も似ているし。

子育ては本当にしやすい。誰かはいるし、誰かは見ているし、全部情報が入ってくる。診療所に(笑)。 海士町はいいと思う。子育てに。

 

ーー:
子育てで不便なことはありますか?

 

亜希恵さん:
学校の持ってくるものとか、明日に使うものがすぐに手に入らないってことはある。

でも、島の人はそれがわかっていて、それなりに融通を利かせてくれるし。

「大阪だったら絶対持っていかないと!」だけど、ここはそうじゃないってわかると楽。すぐに買えないのはみんなが知っているし。

 

ーー:
お山でも用意していただくものも、なるべく早くにお知らせするようにしています。

 

亜希恵さん:
ネットで買えるし、モノは来るし。配達の人もわかってくれたら臨機応変に対応してくれるし。それができるとわかったらいい(笑)。

生活に慣れるとほんとに困ることがない。ガス代が高いな。下水道代が高いなとかかな。

 

――:
島に数年住んで都会に帰った人の話では、海士町は基本の光熱費が高いから、家賃は安いけど、結局は都会とかわらない…みたいな。

 

亜希恵さん:
でも、やれることはいっぱいあって、野菜を作ってみたりできる。

島には娯楽がないから、大阪で遊びに行っていたところでけっこうお金を使っていたけれど、ここではお金を使わない。ほんとに無駄なものがない。

遊びに行くと行っても行くところないし、ほぼただだし。買いたくても買えないし。外食できるところも少ないし。

普段の買い物でも、「ジュースとおやつがむちゃくちゃ高いんだよ、アイスも高いからね、買えないよ」と子どもたちに伝えたけど、なければないで、買って欲しいとかなくて、ほとんど買うことがなくなった。

近所のおじいちゃんやおばあちゃんがくれるおやつぐらい。たまに「アイス持って帰れ」と言ってくれたら「やったー!」と思うぐらい買わなくなった。

――:
わかります。私もアイスは買わない、買えないです。

 

亜希恵さん:
大阪で当たり前になっていたことががらりとかわって、意外と使うところがかわっただけかも。

他の地区のお家に遊びに行ったとき、19時ぐらいに車のエンジンをかけるのが申し訳ないぐらい静か。20時ぐらいには寝るんだろうね。生活の時間が全然ちがう。夜は夜だ。早く寝ようってなる。

 

ーー:
確かに、夜は本当に暗いですね。島一番の地区のフェリー乗り場のあたりでさえ暗くてびっくりします。

 

亜希恵さん:
無駄なものがない、必要なものがあるからいい。島のおばあちゃんたちに、あるものを使えばいいと言われる。

あるものでなんでも作ってしまうのが、こっちの人の感覚で、それが普通の感覚なのがすごいと思う。

いろんなものを消費していたと気づかされた。必要ないものも買ってたんだなって。

あと、着飾らない。

お山に通っているBくんのズボン、穴が開いて繕っていたけどもう追いつかなくて無理と思って、穴だらけで。はきたいズボンっていうのがあるからそればかりはくし。

当て布してまで繕うのができないから、「穴あいててもいいならはいていいいよ」と言っていて、それでも毎日どっか穴あいて帰ってくるけど、「もういいわ」と思って。

「街だと大丈夫かな?」と見られちゃう。ここでは、お山に行ってるのもあるけど、誰もそんな風には思われない。

すぐに捨てるんじゃなくてリメイクしたり、アップリケつけたり、みんなそうしていて、穴が開いたから捨てるじゃなくてね。

 

ーー:
そうか、普通穴が開いたら捨てるんですよね。そうか。娘のズボン繕ってました。

 

亜希恵さん:
新しいのがすぐ買えるから。「消費していたな~」と思うようになった。

島の人の目もそうだから、穴が開いたズボンも使えるし。

車もみんな直さないし、「走るでしょ」という考え方で、生活の文化がみんなこういう考え方だから 気にならなくていい。

ここは、すぐ買えないというのはもちろんあるけど。

虫食いがあっても全然気にしない。まわりも気にしない。都会はそういうの見ているから。

ここは、うまくものを循環させて使ってるなと思って。

街なら百均でなんでも買えるし。無駄にいっぱい持っていたんだな。いらないものがいっぱいあるなと思った。

 

――:
私も住んで8年目になり、だいぶ島生活に慣れてきていたので、お話を聞いて改めてそうだったと気づくことが多かったです。

 

後記:

「島、不便よ、たいへんよ」と言っているだけではつまらないばかりで、Aさんのように、「たいへんじゃないよ~」と思って住むことが、島で幸せに過ごす条件ではないかなとひしひしと思いました。

百人いたら百人の住み方や思いがあるので、海士町に住んだからと言ってみんなが亜希恵さんのような生活にはならないかもしれません。

それでも、海士町に移住を考えている方の参考になればとインタビューを掲載をしました。